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「転職するなら、どんな会社がよいだろう」。求人を見始めても、知っている会社や、今と似た職種ばかりが候補に残る。魅力的な求人があっても、自分がそこで何を担えるのか、今より何が変わるのかが見えない。こうしたときは、会社名を増やす前に、これまでの経験を仕事の中身に分けて捉え直すと、比較する軸を作れます。
最初から「やりたい仕事」を一つに決める必要はありません。どの場面で力を発揮し、何に手応えを感じ、次はどの責任を担いたいのか。経験の根拠から選択肢を広げ、仕事の実態と照らし合わせていく方法を紹介します。
1.職種名を離れ、自分が変えたことを書き出す
「営業をしてきた」「プロジェクトを担当した」という職歴だけでは、別の仕事との接点を探しにくくなります。同じ営業でも、新しい顧客を開拓した人と、導入後の活用を支えた人では、経験の中身が異なるためです。
まず、手応えを感じた仕事を一つ選び、次の順序で短く記録してください。
- 相手は、どんな状況にあったか。
- 自分は、何を任されていたか。
- どこで判断し、誰と何を変えたか。
- その結果、何が変わったか。何は解決していないか。
成果の大きさだけでなく、そこに至る自分の判断と行動を残します。「関係者を調整した」なら、認識のずれを整理したのか、優先順位を決めたのか、実行を止めていた条件を取り除いたのかまで具体化します。周囲の成果と自分が担った部分を分けることも、経験を過不足なく伝えるために役立ちます。
2.できることと、続けたいことを分ける
高く評価された仕事を、これからも続けたいとは限りません。得意だから任されてきた仕事と、自分が手応えを感じる仕事が、少しずれている場合もあります。
経験を整理したら、「力を発揮した場面」と「また関わりたい場面」を別々に書いてみてください。たとえば、提案が通った瞬間よりも、導入後に現場が使いこなせるようになった過程に手応えがあるなら、次の仕事を探す際にも、契約後の成果にどこまで関われるかが大切な条件になります。
反対に、経験がまだ少なくても取り組みたい仕事があるなら、希望を消すのではなく、必要な経験との差を確認します。既に担える範囲、入ってから学べる範囲、応募前に確かめる範囲を分けることで、希望を検討可能な選択肢へ近づけられます。
3.一つの経験から、異なる役割との接点を考える
GCAP PIVOTの公開ページには、顧客の導入目的を捉え、利用部門と技術部門の認識をそろえ、導入後の活用まで支えた経験を掘り下げる対話例があります。
ここでは、「提案・導入・活用のどこに手応えがあったか」「そこで本人は何を変えたか」を確かめています。そこから、顧客の目的を整理し、異なる専門性を持つ関係者をつなぎ、実際の活用へ進める力を仮説として捉えています。
探索する方向は、一つに限定されません。
カスタマーサクセス
導入後の利用や顧客の成果を支えた経験との接点を考えます。次に確認するのは、その職務が継続率・売上・活用支援のうち、どこまで責任を持つかです。
導入・変革プロジェクトの推進
部門間で目的と役割をそろえた経験が接点になります。一方、予算・納期・実行体制を担う経験は、別に照合する必要があります。
パートナー事業の開発
複数の組織で価値を届ける体制を作る方向へ広げます。その際は、関係構築の経験に加え、事業の立ち上げや収益への責任をどこまで担ってきたかを確認します。
これは、その経験があればどの職種にも移れるという意味ではありません。接点と、まだ確かめていない部分を分けることで、次に読む求人や、話を聞く相手を具体化するための考え方です。
4.会社の印象より、担う仕事と条件を比較する
選択肢が見えてきたら、各社の知名度や職種名だけで比較せず、実際に担う仕事を同じ項目で並べます。職種名が同じでも、会社やチームによって責任範囲は異なります。
比較メモは、次の5項目から作れます。
- 仕事の手応え:誰の、どんな変化に関われるか。どこまで自分が責任を持つか。
- 今の経験との接点:自分のどの判断・行動を生かせるか。その根拠となる経験は何か。
- これから伸ばす力:新しく必要になる力は何か。任される仕事や学ぶ機会と結びついているか。
- 働き方と生活:時間、場所、出張、生活上の制約と両立できるか。確認できたことと想像を分けられているか。
- 責任と報酬:求められる成果、裁量、評価の仕組み、報酬を一緒に比較できるか。
各項目を無理に点数化する必要はありません。「分かっていること」「まだ分からないこと」「確認する相手・方法」を並べるだけでも、会社の印象と判断材料を分けやすくなります。
5.求人と対話で、選択肢を検証する
経験を整理して見つけた方向は、まだ仮説です。気になる役割の求人を読み、仕事内容や応募要件と照らし合わせてください。言葉が似ているから合うと決めず、期待される成果、関係者、権限、仕事の進め方まで確認します。
違いが見つかったら、それ自体が判断材料になります。たとえば、顧客支援の仕事に関心があっても、実際には新規売上の責任が大きい場合があります。その責任も担いたいのか、別の役割の方が希望に近いのかを考え直せます。
現職の別の仕事や社内異動が、希望に近い場合もあります。外部の求人と現職の可能性を同じ軸で比較し、次に確かめることを決める。応募は、その過程で選ぶ行動の一つです。
6.最初の一歩は、一つの経験と二つの選択肢から
一度にキャリア全体の結論を出そうとすると、情報を集めるだけで止まりやすくなります。まずは、手応えを感じた経験を一つ整理し、その経験と接点がありそうな役割を二つ選ぶところから始めてみてください。
二つの役割について、今の経験で担えそうな部分と、追加で確かめる部分を書き出します。次の行動は、求人を一つ詳しく読む、職務の実態を知る人に話を聞く、現職で希望する仕事を相談するなど、具体的な一つに絞ります。
GCAP PIVOTでは、経験と希望を掘り下げ、自分だけでは見つけにくい企業・職務も含めて選択肢を広げ、比較と検証を進めます。方向性を探る段階と、応募先が決まって選考の準備を進める段階では、取り組む課題も変わります。いま迷っていることと、既に決まっていることを分けて伝えると、必要な支援を相談しやすくなります。
執筆者
株式会社Global Career Incubator 代表取締役CEO 井川真一
東京大学法学部卒業後、防衛省・オーストラリア国防省での勤務、事業会社での事業開発・組織運営等を経て、2023年にGCIを創業。経営・事業戦略と、役割・人材・業務の実装をつなぐ支援に取り組んでいます。
GCIは、日本と世界の接点で、企業の成長と個人のキャリア・能力発揮を支援しています。
