BUSINESS JOURNAL

採用代行の契約更新を判断するために、改善と未解決事項を分ける

株式会社Global Career Incubator 代表取締役CEO 井川真一

最終更新:2026年10月29日。本文・参考資料は更新日時点の情報です。

採用代行の契約更新を判断するために、改善と未解決事項を分ける

採用代行の契約更新が近づき、「今月も多くの候補者へ連絡しました」という報告を受けた。担当者には助けてもらっている。でも、いまの範囲と費用で続けるべきかと聞かれると、判断しきれない。経営者・人事責任者の方には、こうした迷いもあると思います。感謝しているからこそ、契約の見直しを切り出しにくい場合もあるでしょう。

更新の場では、「何を変えるために頼んだか」へ戻ってください。改善したことは貢献として認め、残る問題は誰の何を変えると進むかを見定める。そのうえで、継続する仕事、組み替える範囲、社内へ戻す仕事を選びます。外部担当者の努力を認めることと、会社に必要な契約を判断することは、両立できます。

連絡は改善した。それでも回答できない質問が残った

以下はGCIが作成した仮想例です。

ある企業は、採用担当が日程調整に追われていたため、候補者連絡と進捗管理を委託しました。更新前の振り返りで、委託前と更新判断前の記録を用意しました。比較する四週間同士で、対象の募集は同じ、応募は各20件でした。

比較項目 委託開始前の四週間 更新判断前の四週間
社内の採用運営時間 32時間 18時間
上の時間に含む委託先との調整 なし 6時間
期間内に連絡期限が到来した案件の期限超過 5件/対象の連絡20件 1件/対象の連絡20件
期間内に回答期限が到来した役割・条件の質問のうち、期限までに社内回答を確定できなかった件数 3件/対象の質問4件 3件/対象の質問4件

18時間には、委託先との打合せや確認の6時間を含めています。6時間をもう一度足したり、18時間から除いたりせず、社内に生じた運営時間の合計として比べます。記録上の差は、32時間−18時間で14時間です。

連絡20件、質問4件、応募20件は、別々の記録です。連絡と質問は、それぞれの比較期間内に期限が来たものを数えており、応募一件に連絡一件が対応するとは扱いません。期限を超えた質問3件は、各比較期間の末日時点でも未回答でした。

この材料を更新会議で受け取ったら、どの仕事を続け、何を会社側で変えるでしょうか。表を見て最初に考えた方針と、その根拠を短く書いてみてください。まだ費用が分からないことも、判断の一部として残します。

「14時間減ったから、そのまま更新する」と答えたくなるかもしれません。ただ、同じ応募件数でも、面接の段階や調整の難しさまで同じとは限りません。14時間は記録した時間の差であり、委託だけで生まれた効果と確定した数字ではありません。この差を、費用に見合うかを考える入口にしましょう。

良くなった点を認め、社内に残った判断を引き取る

役割・条件に答えられない質問が3件残っているからといって、「結局、採用はうまくいっていない」で片づけるのも適切ではありません。連絡の期限超過は5件から1件に減っています。最終回答が出ていなくても、約束した日に状況を伝える対応には価値があります。

この企業は、候補者を待たせたままにする連絡の抜けと、会社の回答が決まらない問題を分けて数えていました。外部の担当者が状況を案内できているなら、その仕事は認めてよい。一方、連絡したことをもって、役割・条件の質問まで解けたと扱うこともできません。二つを混ぜると、委託先へ何を続けてほしいかも、会社が何を決めるべきかも曖昧になります。

未回答の質問をたどると、採用代行は質問を整理して社内へ渡していました。しかし、営業責任者と人事責任者の間で、入社後に任せる範囲の認識が一致していませんでした。連絡件数を増やしても、この違いは埋まりません。役割を決める会社側が、回答を引き取る必要があります。

それでも、原因をすべて社内へ寄せて終えないでください。質問を渡す際に、誰が何を決める必要があるかまで整理できていたか。期限が近づいたとき、決定権を持つ人へ知らせたか。委託先との記録を見れば、質問の整理や伝達に変えられる点が見つかるかもしれません。質問の整理、役割の判断、候補者への説明を別々の仕事として見てこそ、次の分担が具体的になります。

採用人数の評価にも、同じ考え方が必要です。目標未達でも、日程調整や連絡は機能している場合があります。採用できても、説明の食い違いが残っているかもしれません。募集職種、採用条件、面接官の判断、候補者の選択など、採用結果に関わる条件を見ながら、委託した範囲と会社が担う範囲を評価してください。

継続する仕事と、契約する条件を別々に決める

この企業には、日程調整をすべて社内へ戻す時間がありませんでした。そこで、候補者連絡を継続する案を残し、社内では役割・条件を確定する会議を設ける方針にしました。連絡の改善を維持しながら、残った判断を動かす組み合わせです。

選べるのは、この一案だけではありません。いまの範囲が引き続き必要で、品質と負担の釣合いを確認できれば、その範囲を継続できます。一部の仕事を社内で担えるようになったなら、委託範囲を組み替えます。次の担当、時間、記録、未完了対応の引き受けが整うなら、移管・終了も比較対象になります。

仮想例で連絡の継続を残したのは、委託先への感謝だけが理由ではありません。連絡品質に改善が見え、社内には全量を戻す時間がないからです。ただし、その仕事が必要だと判断したことだけでは、提示された範囲と費用で契約してよいとは決まりません。発注を判断する人は、契約上の申出期限を確認し、その前に比較と承認を終えられる会議日を設定してください。

費用を比べるときは、外部への支払いと、社内の運営・確認・判断に使う時間、候補者対応の品質を並べます。契約費用だけを削り、連絡の遅れや担当者の残業へ置き換わるなら、その負担も終了案に含める必要があります。反対に、社内時間が減ったという理由だけで、どの金額でも妥当になるわけではありません。

社内工数を金額に換算するなら、自社で使う時間単価や対象範囲を示しましょう。時間に単価を掛けた額を、そのまま現金支出の削減とみなさないことも大切です。終了案には引継ぎや一時的な並行運用の負担も加えてください。「翌日から費用も作業も消える」という比較では、契約を終える準備が見えなくなります。

更新会議に、会社が変えることまで書いて出す

未回答3件について、営業責任者と人事責任者が同じ会議に出るだけでは、まだ答えが出る保証はありません。それぞれの質問について、どの資料が足りず、誰が最終的に決めるかを、会議前にそろえる必要があります。採用責任者は、次の選考までに確定すべき回答と、候補者へ先に状況を伝える必要がある連絡を分けて、担当と期限を置きましょう。

いま書いた方針を、この点から点検してみてください。改善と呼んだ数字には、期間と分母が付いているでしょうか。未回答を委託先へ返すだけになっていないでしょうか。必要な仕事が残ることと、今の費用で契約することを、一つの判断にしていないでしょうか。

確認したうえで、最初の回答を更新会議に提出する文章へ書き直します。この企業なら、次のような案が考えられます。

候補者連絡は継続を検討する。同じ募集の四週間比較で、連絡の期限超過は対象20件中5件から1件へ、記録した社内運営時間は32時間から18時間へ減った。18時間には委託先との調整6時間を含む。14時間の差を、委託だけの効果とは確定しない。

役割・条件の未回答3件は、営業責任者と人事責任者が、質問ごとの決定者と必要資料を更新会議の前営業日までにそろえる案とする。採用責任者は、各候補者の次の選考日から回答期限を決め、選考前に回答状況と本人への案内を確認する。現在の費用、範囲変更の見積もり、終了時に社内へ戻る負担を比較し、契約上の申出期限前に継続範囲と費用を判断する。

人事責任者は、案に置いた会議の前営業日という準備期限も、次の選考に間に合う日程を組めるか確かめてから、担当者と合意します。契約の決裁者には、比較した費用と、社内が引き受ける変更を示して、発注の判断を求めてください。社内で継続案を選ぶ段階から、委託先との範囲・費用の合意へ進むために必要な材料です。

最初の回答と見比べ、結論の横に「この条件だから選ぶ」と書き足せた箇所を確かめてください。「助かっているので継続する」から、必要な仕事と会社側の変更が見える文章になったでしょうか。費用の回答を受けたら、どの案を選び直すかまで言えれば、更新会議を依頼事項の読み上げで終えずに済みます。

たとえば、条件を決める会議の時間を社内で取れない場合、同じ連絡範囲を延長しても未回答3件への対策にはなりません。経営者・人事責任者は、何の予定を動かして判断時間を確保するかを決めてください。外部の支援を評価する会議だからこそ、支援を受ける会社側の約束も明らかにしておきたいと思います。

次の確認日を、更新の承認と一緒に決める

更新する場合は、次の選考前に未回答3件の進み方を確認するとともに、その後の連絡品質を見る日を決めます。対象の選考が動く時期と、次の契約判断の期限を踏まえ、人事責任者と委託先責任者で確認日を共有しましょう。契約の承認だけ済ませ、同じ問題を次回の更新まで残さないためです。

見るのは、連絡の期限超過が再び増えていないか、役割・条件の質問に会社側が答えられたかです。「未回答をゼロにする」とだけ置くと、確認が不十分でも回答する圧力になりかねません。質問が決定者へ届いたか、必要な材料がそろったか、候補者へ約束した状況案内を行ったかも確かめてください。

回答が止まったなら、その時点で足りない資料と決める人を記録し、次の期限を置きます。数字を良く見せるより、止まった場所が分かる方が、修正する相手と仕事を選べます。外部担当者への「助かった」という感謝を、続けてほしい仕事の説明へ変え、社内に残った判断を会社が引き受ける。そうした更新なら、前と同じ契約を選ぶ場合にも、理由のある選択になります。

更新の判断が分かれるときは、比較した記録を持ち寄る

連絡は改善した一方、採用条件の判断が止まっている。費用を減らしたいが、社内へ戻す時間を見込めない。こうした材料を無理に一つの評価へまとめる必要はありません。

GCIの採用コンサルティング・採用代行では、採用運営の改善と、自社で担う範囲・継続する支援の整理を扱います。委託を始めた理由、更新を判断する期限、改善を確かめた記録、残っている問題を、企業向け相談フォームからお知らせください。初回相談では課題と進め方を伺います。調査・分析・報告を伴う診断は、対象・成果物・費用をご提案し、合意後に進めます。