執筆者:株式会社Global Career Incubator 代表取締役CEO 井川真一
最終更新:2026年10月29日。本文・参考資料は更新日時点の情報です。

日本の会議が終わる頃、現地から判断を求められる。海外へ出張すれば、今度は商談中に国内の承認依頼が届く。海外展開を兼務で担う事業責任者にとって、予定を調整するだけでは収まらない難しさがあります。顧客を待たせないために夜も返信し、国内の仕事も手放さずに進めてきた方ほど、自分が頑張れば何とかなると考えやすいかもしれません。
それでも、二つの場所で同じ時刻に必要となる判断を、一人が引き受け続けるには限界があります。専任化を考えるときは、本人に時間があれば進む仕事と、別の人に判断権がなければ進まない仕事を分けてください。 国内業務を外せば確保できる時間もあれば、専任になっても本社役員の翌朝の回答を待つ案件もあります。
まずは、国内と海外の予定、依頼と回答の記録を二つの時刻で並べましょう。どの時間帯を守り、国内では誰が代わり、現地には何を任せるか。その変更で足りるのか、国内の責任そのものを移す必要があるのか。兼務者だけで抱えず、記録を基に経営側と決めていきましょう。
週に何時間使ったかだけでは、兼務の限界は見えない
海外業務が週の何割を占めるかは、負担を知る材料になります。ただ、その割合だけで体制を決めると、短い判断のために一日待たせている仕事を見落とします。20分の見積り確認でも、現地の商談に必要な時刻に答えられなければ、空いている時間を翌日に増やすだけでは間に合いません。
事業責任者の方は、依頼を受けた時刻に加え、相手が何を進めるために、いつまでに答えを必要としていたかを聞いてください。希望する期限なのか、次の商談や作業から動かせない期限なのかも分けましょう。相手が急いでいるという言葉だけで、すべてを即時対応にする必要はありません。一方、自社の都合で翌日に回すなら、相手のどの仕事が止まるかを把握しておくことが重要です。
時差があると、送信した時刻と、相手が回答を使える時刻もずれます。日本の始業時に答えても、現地では深夜かもしれません。メールを返したところで記録を閉じず、現地側がその答えを使って顧客へ提案できた時点まで追ってみてください。本人が作業した時間と、仕事全体が待った時間を分けて見られます。
互いに応答できる時間帯は、会社として守る対象です。GitLabの公開ハンドブックには、米州と他地域の協働を想定し、地域をまたぐ打合せに使える時間帯を、米州内だけの会議で埋めない運用が示されています[1]。一企業の運用ですが、国内定例を動かさず、海外対応だけを後から足していないかを見直す参考になります。
勤務時間外に本人が埋め合わせた対応も、記録から除かないでください。返事が来ているため表面上は問題がないように見えても、継続できる体制とは限りません。経営側には、本人が応答しなければ止まる仕事と、その時間帯を引き受ける仕組みを一緒に見ていただきたいと思います。
日本滞在中と出張中では、守る時間帯が変わる
日本滞在中は、現地から判断依頼が届く時間帯を国内業務と取り合います。海外出張中は、現地で顧客と向き合う時間が、日本の午後の承認時間と重なるかもしれません。出張前と同じ国内の担当範囲を残したままでは、どちらかを待たせる状態が続きます。
株式会社Global Career Incubator〈GCI〉がここで提案するのは、「対応時間と判断権の照合表」です。既に兼務で海外業務が動いている会社で、事業責任者が本社と体制変更を話し合うために使います。日本にいる期間と出張中の両方から、期限に間に合わなかった判断や、他の仕事を中断して答えた場面を選んでください。
必要な記録は、依頼内容、双方の時刻で見た回答期限、その時刻に重なっていた仕事、当時決められた人、実際の回答と影響です。見積書、予定表、メールや承認履歴を照合しましょう。必要な資料が揃った時刻も残せば、担当者が空いていなかったのか、判断材料を待っていたのかを区別できます。
出張の回数だけを数えるのではなく、その不在中にどの国内判断が本人へ戻ったかを見ることです。代行者に資料がなかったのか、判断基準がなかったのか、権限だけがなかったのか。代行者自身の予定が埋まっていた場合もあります。「留守は副部長に頼む」と決めるだけでは、この違いが残ります。
ご自身の兼務体制についても、直近の依頼と予定の記録だけで、いま経営側へ出す体制提案を一度書いて保存してください。日本と現地の双方の時刻、相手が答えを使いたかった期限、当時その判断をできた人を一緒に書きます。「自分を専任にする」「会議を減らす」といった結論だけでなく、どの時間帯を守り、どの判断を誰へ移し、本社に残す判断を誰がいつ返すのかまで、現時点の案として残してください。
次に、新しい予定や後から作る作業見積りを足さず、同じ依頼履歴だけで、その提案の理由を点検します。本人に時間があれば解ける待ちなのか、別の人へ判断権を渡さなければ解けない待ちなのか、そもそも本人では決裁できない待ちなのかを分けてください。その区別に合わせて同じ体制提案を書き直し、最初の稿と並べます。肩書を変えることと、必要な時刻に答えを出せる体制をつくることの差が説明できたら、最初の比較は終わりです。
仮想ケース:二つの時計で、専任化しても残る待ちを見つける
以下はGCIが作成した仮想例です。
現地は日本より7時間遅く、例に挙げる日は双方とも通常営業日、通常の対応時間は各地の9〜18時と仮定します。
業務用家具を販売する日本企業で、国内営業部長が海外事業責任者を兼ねています。現地営業担当者は顧客訪問と見積り案の作成を担っていますが、標準価格・標準条件の見積りも、兼務責任者の承認を受けてから提示する決まりです。価格表の範囲を超える値引きは、本社の管掌役員が決裁します。
国内には副部長がおり、案件資料を共有し、定型的な見積り案を作れます。ただし、最終承認は部長だけに残っています。副部長と現地担当者に承認まで任せられるか、代行の時間を確保できるかは、まだ確認していません。
兼務責任者は、日本滞在、海外出張、帰国後を含む直近3週間から、次の記録を拾いました。
| 必要だった答えと時刻 | 同じ時刻の仕事・判断権 | 実際に起きたこと |
|---|---|---|
| 日本滞在中の月曜、現地10時〈日本17時〉に標準見積りの承認依頼。現地11時〈日本18時〉の商談に使いたい。資料は依頼時に揃っていた | 本人は日本16〜18時の国内営業会議に出席。現地担当に提示の権限はない | 本人は日本の翌朝9時〈現地翌2時〉に回答。確認の実作業は20分。現地担当が使えたのは翌9時で、前日の商談には間に合わなかった |
| 同じ週の火曜、現地14時〈日本21時〉に価格表外の値引き相談。顧客は現地17時〈日本の水曜0時〉までの回答を希望 | 本人に決裁権はなく、本社役員の通常対応時間も終わっていた | 本人が夜に依頼内容を整理しても決裁は進まず、回答は現地の翌営業日になった |
| 出張中の月曜、日本16時30分〈現地9時30分〉に国内標準見積りの承認依頼。国内顧客は日本17時30分〈現地10時30分〉までに回答を希望 | 本人は現地9〜12時の顧客訪問中。副部長は資料を揃えていたが、承認できない | 本人が回答したのは現地12時30分〈日本19時30分〉。国内顧客への回答は翌営業日へ持ち越した |
| 帰国後、海外の販売先別提案をまとめるため、日本13〜16時の枠を別日に2回確保 | 国内の重要顧客に関する条件調整が入り、国内責任者として本人が対応 | 提案準備を2回とも繰り越し、予定していた社内確認日に案を出せなかった。必要な残作業量と、他者へ移せる範囲は未確認 |
最初の行では、日本の16〜18時と現地の9〜11時が、通常の対応時間の重なる部分です。その時間を国内会議で使い切ったため、短い確認でも翌日へ回りました。依頼から日本側の回答までは16時間、現地担当が使えるまでは23時間です。20分という実作業の短さだけでは、この待ちを解けません。
ただし、この一件だけから海外業務が一人分あるとは言えません。現地担当に基準内の見積り提示を任せるか、国内会議を移して応答枠を守れば解ける可能性があります。反対に、2行目の価格表外の相談は、本人が専任になっても役員の決裁待ちが残ります。
3行目は、海外にいる本人の時間を増やすより、国内の定型判断を引き受ける人をつくる方が直接的です。4行目では、海外の仕事に継続して取り組む時間が失われています。ここは定型承認の代行だけで十分か、国内の重要顧客への責任まで移す必要があるかを調べる対象になります。
同じ記録から、経営側への提案を変える
兼務の負担を大きさだけで伝えると、次のような説明になります。
時差と出張で国内外の対応が遅れています。海外専任にしてもらえれば、承認も提案準備も早められるので、専任化をお願いします。
国内業務を減らしてほしいという要望には理由があります。しかし、すべての遅れが解消する説明にはなっていません。本社役員が持つ決裁は残り、本人が国内から離れた後の承認も、引受先が必要だからです。
照合表を使えば、同じ事実で次のように提案できます。
4種類の待ちを、一律に専任化で解こうとするのは難しいと考えています。次の出張に向け、現地の標準見積りと国内の定型承認を、基準と記録を揃えて移せるか確認したいです。日本滞在中は、現地と応答できる16〜18時を国内会議から守る案を提案します。価格表外の相談には、本社役員が判断できる時間と、その時間に間に合わない依頼への回答方法を決めてください。海外の提案準備を継続して確保できるかは、残る国内責任と今後の予定を照合し、国内の責任を正式に引き継ぐ専任化まで比較します。
この提案を受け取った経営側は、誰に何を任せるかを決める番です。現地担当者と副部長が引き受けられる条件を確かめ、役員自身の回答時間も決めてください。肩書を変えた後も本人が国内外の判断を抱え続けるなら、求めていた時間は生まれません。仕事と判断権を実際に渡し、どの待ちが解けたかを記録で確かめるところまで、経営側が関わりましょう。
応答時間を空けるなら、判断権と受け手も一緒に動かす
日本滞在中の16〜18時を空ける案なら、国内会議の時間変更や副部長による進行を、国内側の責任者と合意するところまで進めてください。予定表へ海外対応と書いただけで、国内会議への出席が従来どおり求められるなら、使える時間は増えていません。
その枠は、現地と対話するために確保する時間です。現地担当者の予定とも合わせ、双方が応答できるようにしてください。企画を練る、資料を読み込むといった連続作業もすべて入れれば、今度は応答と準備が競合します。事業責任者は、現地と対話する枠と、一人で考えたり社内案をまとめたりする枠を分け、どちらを国内業務から守るかを上司と決めましょう。
現地へ標準見積りを任せる場合も、「現場判断で」とだけ伝えないでください。この例なら、承認済みの価格・仕様・納期条件から外れない見積りは、現地担当が提示して記録を残す。値引き、仕様変更、納期短縮などで基準を超える場合は、提示前に本社へ戻す。この境界を、実際の案件で説明できるようにする必要があります。
日本貿易振興機構〈JETRO〉が2022年に公表した東南アジアの日本企業に関する調査も、本社と海外拠点の権限内容が具体的でなければ、その都度本社判断を求めることになると指摘しています。委譲の範囲は、双方の役割や商品特性などに応じて決める考え方です[2]。一律に現地へ渡すことを勧める根拠ではありません。
本社に残す判断には、本社が答える仕組みを置きましょう。仮想ケースの役員判断なら、現地午前の共通時間帯に材料を揃える進め方と、それを過ぎて届く依頼の扱いを分けます。午後に届いた相談へ当日中に確定回答できない場合は、現地担当が理由と次の回答予定を顧客へ伝える。受領の連絡を、価格承認と取り違えないことも重要です。
顧客にとって当日の判断が不可欠なら、回答を翌日に回すだけでは足りません。役員の代わりに決められる人を置くのか、事前に決めてよい価格条件を広げるのか、対応できる時間帯の体制を別に整えるのか。経営側が引き受ける判断です。残念ながら、決裁権のない兼務者を夜に待機させても、この不足は埋まりません。本人の即応性を責める前に、誰ならその場で答えを出せるかを決めてください。
出張中の国内業務は、「代行する人」の仕事として成立させる
国内副部長へ承認を渡すなら、出張前に実際の見積りを使って判断を確かめましょう。価格表内で条件が揃った案件と、基準外の値引きがある案件を渡し、何を自分で決め、どこから役員へ戻すかを説明してもらってください。元の部長と結論が同じかだけでなく、見た情報と理由が妥当かを見ることです。
判断できても、本人の作業時間が確保されていなければ代行は続きません。経営側は、副部長の既存業務のうち何を減らすか、案件資料へのアクセス、顧客への連絡、代行中の決裁範囲まで揃えてください。部長の不在を、別の一人の時間外対応で埋める形にはしないでいただきたいと思います。
任せた範囲を、結局すべて出張中の部長へ再承認させる運用も見直しましょう。基準内の判断は代行者が完結し、記録を共有する。例外は、部長が現地の商談を中断しなくても判断できる本社の責任者へつなぐ。どこまでならこの運用で進められるかを合意しておけば、現地顧客へ向き合う時間も守りやすくなります。
帰国時には、部長へ戻す仕事と、そのまま国内側に残す仕事を整理してください。出張中だけ何とか代わった結果をもって、恒常的な専任化の準備ができたとは限りません。通常業務と重なったときの負担や、判断の手戻りまで見てから移管範囲を決めることが重要です。
国内の責任をどこまで移すかで、兼務と専任を選ぶ
専任化は、肩書を変えることではありません。国内の仕事と判断責任を引き受ける相手を決め、海外業務へ使える時間を継続して確保することです。専任者が日本にいるのか、現地にいるのかも別の条件になります。日本で専任にしても、現地午後のすべてに通常時間内で対応できるわけではありません。
次の6週間の予定を本人と管掌役員が照合すると、海外の新しい販売先とは毎週火・木の現地9〜10時〈日本16〜17時〉に条件交渉を行う予定が相手と確定したとします。この6週間は本人が日本から交渉へ参加する予定です。現地担当者が単独で担う準備はまだ整っていません。同じ火曜の日本16〜17時には、国内重要顧客の取引見直しも入り、双方の相手に相談しても時間を動かせませんでした。
副部長と現地担当者については、標準見積りなら基準内の判断を任せられると確認できたものの、この取引見直しと新規の条件交渉を単独で任せるには準備が足りないとします。基準内の承認を移しても、火曜の同じ1時間に本人が必要な二つの交渉が残ります。国内では交渉結果に応じて次回の条件案を組み直す仕事や、その間の例外判断も部長に残ります。
ここで確定している海外交渉は週2時間です。専任化まで必要かを考えるため、会社は、この6週間に本人の通常時間内で仕事へ配分する枠を週40時間と置き、案件ごとに残作業を見積もりました。海外の仕事は、交渉2時間、交渉前の資料作成と条件整理6時間、交渉後の条件案修正と現地担当者への回答4時間に分け、重複を除いて週12時間としました。これは今後の仕事の見積りであり、先の記録で繰り越した2回の予定枠を実作業として足したものではありません。
国内側は、基準内の承認を移すことを織り込んでも、本人に週32時間の仕事が残る見込みでした。そのうち、火曜の重要顧客との交渉1時間と、準備・条件案の修正・例外判断7時間を合わせた8時間が、この取引見直しに伴う仕事です。定型承認の移管だけでは、国内32時間と海外12時間で計44時間となり、週40時間の配分枠に収まりません。火曜の衝突も残ります。
そこで、国内の重要顧客への責任をどこまで移すかを比べます。火曜の交渉への出席だけを代えても、準備や条件判断が部長へ戻れば、移せるのは一部です。管掌役員がこの取引見直しの責任と例外判断を引き受け、副部長が資料の準備と条件案の更新を担う案なら、交渉とその前後を一続きに渡せます。副部長に単独交渉を任せる案にはせず、役員が顧客への説明にも入り、決める範囲を明らかにします。
この案について、役員と副部長が引継ぎを含む必要時間を見積もり、既存の担当業務を組み替えて引き受けられると確認できたとします。経営側は、受け手の追加作業と費用、他の国内案件への影響を確認して、取引見直しの8時間分を本人から移す案を承認しました。本人に残る国内24時間と海外12時間は、合計36時間です。さらに、火・木の交渉枠、交渉前に必要な連続した準備枠、交渉後の回答期限を、残る国内業務と予定表上で照合しました。国内の確認を本人へ戻さず役員が答える取り決めも揃い、これらの枠を守れる見通しが立ったため、この6週間は役割を変えた兼務を選びました。時間量とともに、仕事が必要な時刻と判断の引受先を揃えたうえでの選択です。
一方、同じ照合をしても、部分移管では国内の例外判断が本人へ戻り、海外の準備と回答を必要な時刻までに終える見通しが立たないなら、国内の責任全体を移す6週間の専任化案へ進みます。移す範囲は、重要顧客の8時間分から、定型承認の移管後に残る32時間分の仕事全体へ広がります。経営側が海外交渉と準備を優先すると決め、国内の引受責任者と支える人の時間・権限・費用を確保できた場合に、この案を選んでください。引継ぎ開始日と責任を切り替える日を決め、国内の依頼者にも新しい判断者を伝えます。引受先を用意できない場合や国内側を優先する場合は、海外交渉の対象や日程、国内側の計画を会社として組み直しましょう。両方を従来どおり進める約束を、本人一人へ残さないでください。
どちらの体制を選ぶ場合も、始める前に第6週末の見直し会議を置き、本人、国内の引受責任者、管掌役員で判断する日を決めてください。海外の準備・交渉・回答に実際に使った時間、顧客が期限までに答えを使えたか、国内の遅れや時間外対応、本人へ戻った判断を記録し、その後の受注・交渉予定と並べます。
部分移管で国内外の仕事を期限と品質を守って進められ、受け手にも過剰な負担が生じていなければ、その分担で兼務を続けます。6週間の専任を選んだ場合も、交渉終了後に本人へ残る海外業務が減り、国内の一部を戻しても応答と準備の枠を守れるなら、戻す仕事と国内に残す判断を決めて兼務へ戻します。反対に、海外で継続して担う仕事があり、国内の責任を戻すと衝突が再発する見通しなら、国内の引受体制と費用も含めて恒常的な専任を判断してください。6週間の成果だけで延長を決めず、次の期間に必要な仕事と、それを担える分担を改めて承認することです。
専任化後にも、価格表外の値引きは役員判断として残ります。この待ちに対応するため、経営側は本社の応答枠と例外対応を別に定めてください。専任化と本社支援の変更は、どちらか一方だけを選ぶものとは限りません。
見直し日まで待てない変化もあります。出張が増える、現地の交渉が重なる、国内の重要案件が入ると分かった時点で、本人と引受責任者が予定を持ち寄り、管掌役員へ配分の変更を求めてください。一度決めた体制を守るために、当初は含めていなかった仕事を時間外へ押し込まないようにしましょう。
次の出張前に、本人が答えない場面を確かめる
直近の依頼履歴と予定表から、日本滞在中に答えが遅れた場面と、出張中に国内業務へ呼び戻された場面を一つずつ選んでみてください。本人の記憶だけで完成させず、現地担当者や国内の依頼者に、いつ答えを使いたかったかを確認しましょう。
そのうえで、次の出張前に代行予定者と案件を読み、本人が回答しない場合の進め方を説明してもらってください。判断が止まるなら、情報、権限、技能、時間のどれが足りないのかを残す。決められるなら、会社としてその範囲を任せる手続きと、結果を見る人を明確にするところまで進めましょう。
実際に体制を変えた後は、回答が速くなったかだけではなく、必要な期限に答えを使えたか、誤った判断ややり直しが増えていないか、元の担当者への確認が残っていないかを見てください。国内側の仕事が滞ったり、代行者の時間外対応が増えたりしていれば、負担の移し先を変えただけかもしれません。
兼務者ご自身が、どこまで引き受けるかを言葉にすることも必要です。国内と海外の両方を大切にしてきたからこそ、手放しにくい仕事もあるでしょう。担当を外すことを責任放棄と考えず、必要な判断を次の人が担える条件まで渡してください。経営側も、本人から限界の訴えが出るのを待たず、二つの時間割が両立しているかを一緒に見直していきましょう。
専任化と本社支援を、同じ場で相談する
本人は海外へ集中したいのに、国内の引受先を決められない。本社は現地へ任せたいと考えているのに、どこまで渡してよいかが具体化しない。こうした状態では、兼務者一人が予定を調整しても、体制の判断には届きません。
GCIの経営・組織コンサルティングでは、事業の方針と役割・権限・人材・日々の運営を照らし、必要な設計と合意した範囲の実行・改善を支援しています。専任化の結論を先に決めず、実際に判断が重なった記録、出張中も本人に残る国内業務、現地と本社の決裁範囲をお聞かせください。会社としてどの責任をどこへ移すか、実行できる条件から整理していきましょう。
海外事業の兼務体制と、本社の支え方について相談する
参考資料
[1]GitLab 「GitLab Communication」― Scheduling meetings
[2]日本貿易振興機構〈JETRO〉「東南アジア市場における日本企業の経営革新に関する事例研究と要点の抽出に関する調査」、2022年6月、本文21頁。
